【顧客事例紹介】アルメニアテック企業の魅力 – 安井建築設計事務所

アルメニアハイテク技術推進プラットフォームでは、アルメニアのテック産業・企業の魅力を日本の企業様にお届けしています。今回は、アルメニアのテック企業と協業経験のある株式会社安井建築設計事務所の杉野氏にインタビューさせて頂きました。背景や事業課題、取引メリットから潜在課題、その解決策まで貴重な経験をシェア頂きました。


事務局:
簡単に会社及び自己紹介をお願いします。

杉野氏:
当社は公共施設から民間の都市開発まで幅広く手掛けている建築設計事務所です。その中で私が担当しているのは大規模な公共施設や、都市計画・まちづくりプロジェクトです。これまでに国内案件はもちろんですが、アジアを中心とする海外諸国でもいくつかのプロジェクトに関わってきました。特に関わりが深いのはベトナムと台湾で、いずれも数年前に当社の拠点を設立して継続的な事業活動を展開しています。それ以外の国も含め、今後さらに海外事業を拡大するべく取り組んでいるところです。そのためには各国の専門家・技術者との連携は不可欠で、彼らとのネットワーク構築が戦略上非常に重要になっています。


事務局:
アルメニアテック企業との出会いについて教えてください。
また、当時の第一印象はいかがでしたか?

杉野氏:
当社では3年前からJICA留学生インターンの受け入れを行っています。様々なキャリアを持つ留学生の中から当社の業務内容に近い専門性を有する人材を探して声をかけているのですが、2023年に受け入れた留学生のうちの一人がアルメニア人建築家・都市計画家のArtur Hovhannisyan氏でした。

Artur氏は留学生でありながら当時すでに母国アルメニアで複数の企業を設立しており、今も代表として経営に関わっています。アルメニアにおける産業や企業の状況を俯瞰した時に、彼が企業活動を通して実現しようとするものは非常に挑戦的で、国の産業発展の一翼を担うという野心も明確に感じられました。母国の建築業界において若者に与えられるチャンスは限られているとの話も聞きましたが、その状況を打破するために先進的な技術を磨き、日本でのキャリア形成を決断し、当社との連携に至りました。そして今は東京大学との共同研究にも取り組むなど、挑戦をさらに加速させています。


事務局:

当時、どのような背景や課題・ニーズがありましたか

杉野氏:
前述の通り、当社は海外諸国における技術系企業とのネットワーク構築に取り組んでいます。様々なつながりの中で現地企業にアプローチするのですが、実際のところ具体的な協働の経験を通してでなければ相互に「パートナー」と認め合う関係は築けません。JICA留学生インターンの受け入れにはいくつかの狙いがありますが、その一つは協働を通して信頼できるパートナーを探すというものです。

様々な国の留学生と協働していると、当然ながら国民性の違いもあれば、留学生個人のパーソナリティやスキルの違いも見えてきます。当社がパートナーに求めるのは、一定レベルの技術力は当然のこととして、相互にリスペクトを持って支援し合えること、一方で自らの強みを積極的に提案できることです。社外の専門家と協働するからには、当社単独では成し得ない成果を目指していきます。



事務局:
なぜ最終的に、そのアルメニアテック企業との取引を決めたのですか?

杉野氏:
第一に、インターン期間を通じて彼らの能力と仕事に対する姿勢が素晴らしいものであると理解していたからです。その上で、具体的な協業のきっかけとなったのは、アルメニアにおける建築デザインコンペに共同で参加したことです。インターンの時はあくまで当社での研修であったのに対し、コンペにおいては企業どうし対等な立場で協業を経験しました。議論の際には相互にアイデアを出し合いましたが、異なる文化、似て非なる技術を背景とした意見は双方に大きな刺激を与えました。興味深かったのは、議論を重ねる度にコミュニケーションが円滑になり、最終的には「以心伝心」とも言える関係を築けたことです。日本とアルメニアは地理的には近いとは言えませんが、何か精神性として通じるものがあるのかもしれません。


事務局:
取引により、どのような成果に繋がりましたか?
差し支えない範囲で回答頂ければ幸いです。

杉野氏:
今後のさらなる協業のあり方についてはまさに現在議論しているところですが、目指しているのは新たな方法論の獲得です。当社のような技術系サービスを主商品とする企業が市場において競争性を持ち続けるためには、保有する技術を常に更新・進化させていく必要があります。社外、とりわけ国外の技術をそこに組み込むことでブレイクスルーを達成できる可能性があると考えています。


事務局:
アルメニアテック企業との取引で苦労された点はありますか?
有効なアプローチ・対策として何が考えられますか?

杉野氏:
今のところ特に苦労したという経験はありません。英語力についても先方の方がスキルが高く、むしろこちらが苦労をかけていると思います。強いて言えば日本からの直行便が無いことでしょうか。まだ現地に行く機会を得ていませんが、今後協業において現地チームとの対面での打合せが必要な局面もあると考えています。


事務局:
最後に、アルメニアテック企業との取引を検討されている
日本企業へメッセージをお願いします。

杉野氏:
おそらく多くの日本企業にとってアルメニアは馴染み深い国ではないと思います。また私が知っているアルメニア企業もごく限られており、現地産業界の全体像を把握しているわけではありません。ただ、その企業は少なくとも当社にとって十二分に信頼に足る協業相手であり、今後もパートナーとしてともに発展していきたいと考えています。多くの可能性を秘めた未知なる国から、御社にとっての良きパートナーを見出されることを祈念いたします。


インタビュイー・プロフィール

株式会社安井建築設計事務所
都市デザイン部 兼 国際部 兼 プロジェクト・マネジメント部
杉野 卓史

大学及び大学院で建築・都市計画を学んだ後、安井建築設計事務所に入社。現在は都市デザイン部、国際部、プロジェクト・マネジメント部を兼務し、国内のまちづくり・公共施設計画から海外の都市計画プロジェクトまで、幅広い領域で計画・設計業務に携わる。